「身体」への関心が高まっているが、あなたもそんな新進のフィットネス信者の一人だろうか？　夏までには、弛みきったお腹を凹ませたい、はたまた肋骨がうっすら浮かび上がる貧相な胸をどうにかパンプアップしたい、身体を鍛え上げて試合に勝ちたいなど、フィットネスに打ち込む動機は人それぞれのようだ。2000年代には、苦行のように思えたジムでのトレーニングは、2010年代になると美しい身体を“ショッピング”するためのファッショナブルな体験へと、私達の意識中で変化した。最近は「#ABOUTLASTNIGHT」のハッシュタグを付けて、シャンパン塗れのどんちゃん騒ぎを誇らし気に投稿しても「いいね！」が付かないことを気にしてはいないだろうか？  二日酔いに苛まれながら昼過ぎに目覚めた頃には、あなたのタイムラインが最新設備の揃ったジムで颯爽と汗を流す友人達の姿と、「#NOEXCUSE」のハッシュタグ付きの投稿で埋まっていることだろう。

DISTRICT VISIONのファウンダー、マックス・ヴァロットとトム・デイリーにとっても（そして私達の多くにとって）2000年代とは、快楽と浪費が美徳とされた時代だった。ロンドンのビジネススクールで出会い、その後ニューヨークに移り住んだ二人は、しばらくの間はSAINT LAURENTとACNE STUDIOSでそれぞれ働いていた。オフィスワークとナイトライフのルーティンは、一時はスリリングであったけれども、二人の心身を次第にすり減らしていった。ヴァロットはオフィスで平静を保つのを困難に感じ始め、デイリーは当時付き合っていたガールフレンドと別れ、傷心に浸っていた。丁度そんな時に、ヴァロットはオフィス隣のビルにスタジオを構えていたアイアンガーヨガに、デイリーはダウンタウンを中心に活動するランニングチーム、ブラック・ローゼズに出会う。

「目が覚めるような経験でした」。ヨガインストラクターのガールフレンドの紹介で、リストラティブヨガのクラスに通い始めると、ヴァロットはこれまで感じたことのないような、精神的な安堵を実感した。次第に、あれほどストレスに感じていた膨大な量の仕事にも、平静に対処できるようになったのだ。「ありのままの自分を見つめる寛容さこそ、ヨガのトレーニングから得た最大の報酬でした」。ヴァロットはヨガを通して、自らをより良く理解し、身体と精神の両方をリスペクトする術を学んだのである。同時に、心身の健康が改善されたアクティヴなライフスタイルは、ブランドの立ち上げを構想していた当時の二人に、進むべき道を指し示した。「フィットネスやヘルスケアの分野において、実用的なプロダクトのデザインや開発を行い、アスリートやアクティヴ志向のユーザーのモチベーションを刺激するソーシャルを組織する」。そんなミッションを掲げ、DISTRICT VISIONは考案された。

「KEIICHI」と名付けられた革新的なアイウェアは、ニューヨークのアスリート達から寄せられるパフォーマンスのフィードバックと、福井の眼鏡職人達から寄せられるエンジニアリングのフィードバックを結集させ、2年の開発期間を経て完成した。ナイロン樹脂「TR90」のフレームとポリカーボネートのレンズは軽量かつ衝撃に強く、撥水及び撥油のプロテクションコーティングは気候や体調の変化によるパフォーマンス低下を回避してくれる。記憶形状チタンが内蔵されたノーズパッドとテンプルティップは鼻と耳への負担を減らし、アレルギーフリーのラバーシェルによって皮膚を守る。帯締め紐の伝統的な手編みの技法から生まれたストラップは、伸縮性に優れ、長さ調整可能なアジャスターを使えば、あらゆるフィットネスのシーンに最適なフィッティングを提供してくれる。「2010年代のフィットネスブームはイメージばかりが先行していて、ユーザーの実際のパフォーマンスを向上させるような、本来的な目的を達成しているプロダクトが少ないと思うのです」。マーケットに溢れる“フィットネスもどき”のプロダクトとは一線を画するDISTRICT VISIONの革新的なプロダクトは、さながら「機能性を極めたデザイナーズアイウェア」といったところだろう。

「フィットネスやヘルスケアの分野では、多様な分野の専門家チームの編成とそのチームワークが、プロダクトの完成度を左右するのです」。デザインから製品化に至るまでの一連のプロセスにおいて、コラボレーションがいかに重要であるか、デイリーはこう説明した。特権的な一人のデザイナーが決定権を牛耳る、古臭いファッションデザインのプロセスも、トレンドというワンシーズン（6ヵ月）の賞味期限付きの消費サイクルにも、どうやらDISTRICT VISIONのアプローチは当てはまらないようだ。従来のトップダウン式の、いわば線状のデザインプロセスとは異なり、「デザイナー」「メーカー」「ユーザー」の三者による、相互のフィードバックのループから、つまりは環状のデザインプロセスから、プロダクトの輪郭を立ち上げていくのだ。

「メーカー」に福井の眼鏡職人達を選んだのも、フィードバックのループという時間の掛かる「対話」のプロセスを重んじる、物作りの姿勢に惹かれたからだという。「日本の職人達は発注後でも、プロダクトの微調整を怠りません。彼らは“完璧”を達成するためなら修正をいとわないのです」。より高い完成度を求める職人たちの「改善」の精神性が、DISTRICT VISIONのプロダクトに並外れた精度をもたらしたのだ。このようなプロセスを経て完成したファーストモデルは、エンジニアリングの中心的役割を果たした職人の名前を取って「KEIICHI」と名付けられた。「職人の名前をプロダクト名とすることは、ごく自然な決定でした」。互いの専門知識へのリスペクトで固く結ばれた両者は、プロダクトの開発のみならず、共にフィットネスを楽しむ仲間でもあるようだ。デイリーは、昨年のホノルルマラソンを“敬一”と共に走った。

優れた機能と耐久性を持ったプロダクトの製作は、物作りが環境に与える影響を抑える最善のアクションとして、DISTRICT VISIONが掲げる環境へのポリシーである。高性能なマテリアルを使い、適切なメンテナンスの説明や、アフターケアのプログラムを提供することで、ライフサイクルの長いプロダクトのみをマーケットに供給する。「ユーザー」はプロダクトと長く寄り添い、結果として各々の消費に責任を持つことができる。「何処で、何を材料に、誰によってプロダクトは作られるのか？」「価格は適正か？」「自分の生活に必要だろうか？」。DISTRICT VISIONの愛用者は元より、現代においては、より多くの人々が購入するプロダクトの厳正な価値判断を行い、持続可能性のあるプロダクトの価値を認めるようになってきたのである。

DISTRICT VISIONのもう一つの重要な構成要素にソーシャルがある。ウェブサイトは二人がトレーニングを共にする、ブランドのフィロソフィーを体現するローカルアスリートを紹介する場であり、また、彼らが指導するヨガやランニングのオープンイベントを通して、新しい仲間と出会う場でもある。昨年11月に開催されたニューヨークシティマラソンに合わせ、ウェブマガジン『AMUSE』で公開されたビデオプロジェクト「ランナーズ・ハイ」では、それぞれの目的に向かってアクティヴなライフスタイルを実践している様々なニューヨーカーを紹介した。400メートル、800メートル競技オリンピック選手のセラーシ・ルマックス、フォトグラファーのマイケル・アヴェドン、ミッドナイトハーフマラソン覇者のリー・ガーソン、モデルのアラナ・ブンテ、ブラック・ローゼズのヘッドコーチのノックス・ロビンソン、アイアンガーヨガ師範のジェームス・マーフィーなど、それぞれのフィットネスのレベルが全く異なるアスリート達が集まって、共通のトレーニングメニューをこなしたのである。初めにヨガのメディテーションを、それから激しい有酸素運動を行ったアスリート達は、カメラの前で、フィットネスの苦悶から高揚へと導かれる覚醒の瞬間を見せてくれた。



ビデオプロジェクト「ランナーズ・ハイ」より。





「メディテーションを経ることで、有酸素運動のトレーニングを苦痛としてではなく、別の感情で捉えられるよう意識中に種を蒔いたのです」。ヴァロットによれば、メディテーションとは身体の動作や呼吸の反復を行い、身体の隅々にまで意識を巡らせることで、身体と精神が一体となった完全なる集中状態への到達、つまりは肉体的・精神的苦痛からの解放であるという。そう、精神を寛容に保つことができれば、ありのままの自分と向き合い、身体に秘められた驚くべきフィットネスの可能性を探る冒険を、今すぐ始めることができるのだ。

村上春樹は『走ることについて語るときに僕の語ること』（2007年／文藝春秋）の中で、走ることを指して、こんな格言を紹介している。「PAIN IS INEVITABLE. SUFFERING IS OPTIONAL（痛みは避けがたいが、苦しいと感じるかは自分次第である）」。今、あなたが鏡の前の自分の姿に満足していないなら、その「苦しみ」を「挑戦」と捉えてみてはいかがだろうか？　そんな「ココロ」と「カラダ」の新しい関係性を築きたいと願う全ての人にとって、DISTRICT VISIONはきっと最善のパートナーになってくれるだろう。




SUNGLASSES ¥38,000 BY DISTRICT VISION (EDSTRÖM OFFICE)




SUNGLASSES ¥43,000 BY DISTRICT VISION (EDSTRÖM OFFICE)


DISTRICTVISION.COM