ANTI-EASY

ISSUE 7
TEXT SHINGO ISOYAMA
もしも今、世の中の衣服からブランドタグを取り外したとしたら、一体どれだけのブランドを見分けることが出来るだろうか。その時、「~風」「~っぽい」という言葉に回収されない衣服には一体何が詰まっているのだろうか。タグ付きの情報で溢れかえる今現在だからこそ、衣服そのものに宿るブランドアイデンティを見出して欲しい。ー






JW ANDERSONの下で企画担当をしていたデザイナーによるニューヨーク発のブランドより届いたのは、ざっくりと着ることの出来るチュニック。機能的な印象のスクエアポケットに加え、ワイドな袖口に刺繍の飾りボタンが施されるなど遊び心も垣間見える。ペインターが創作時に着る作業着をイメージしたというこの一着は、その昔、絵を描いていたというデザイナーのパーソナルな経験から。

TUNIC ¥46,000 (ISETAN SHINJUKU)










「スタイリングで映える服」をブランドポリシーに掲げるデザイナーは、JACQUEMUS、Y/PROJECT、JW ANDERSONでアシスタントした経験を持つ。本プロジェクトで発表するアイテムは、滑らかな曲線の前立てが特徴的なタイプライターシャツ。襟元のブランドネームタグのあった箇所に、「I BELIEVE IN YOU.」のメッセージと、アーティストによる作品がプリントされたオリジナルスカーフをハトメで挟み込むことで、スカーフそれ自体をシャツの一部分へと取り込んだデザインに。

SHIRT ¥36,000 (ISETAN SHINJUKU)








デザイナーがモスクワで過ごしていた頃の経験と記憶が、このブランドのインスピレーション源。ホワイトシャツにドッキングされたストロベリー柄のファブリックは、デザイナーがかつて見たという農民の女性の姿をイメージしながらピックアップ。かつての記憶をマテリアルやギミックへと落とし込み、一つの衣服へと織り込んでいくアプローチはこのブランドならでは。本プロジェクトでは、更に2枚のシャツをデザインしている。

SHIRT ¥53,000 (ISETAN SHINJUKU)










2011年に立ち上げられたウクライナ発のブランドは、デニムを駆使したアイテムをリリース。5本のヴィンテージピースを使用して製作されたジャケットの背中には、キリル文字のグラフィックをプリント。デニムを用いていることから「Dシャツ」と命名されたトップは、新品のデニムとヴィンテージデニムを組み合わせたもの。また、ヴォリューム感が絶妙なジーンズは、何と1.7メートル分のヴィンテージデニムが用いられているという。

DENIM JACKET ¥89,000, DENIM TOP ¥53,000, 
JEANS ¥59,000 (ISETAN SHINJUKU)






ショート丈のブラックデニムジャケットに赤いステッチをプラスすることで独特の存在感を放つ一着。元になっているジャケットは、実はダメージ加工のプロセスで色が抜け落ち過ぎてしまったというB品アイテム。ボディの絶妙な風合いを出すために同アイテムを黒く染め直し、また背面のインパクトのあるグラフィックと「NOT BRAND」の文字は、桐生市にある老舗刺繍工場によって施したという。衣服全体から香り立つダークなムードは、デザイナー自身が影響を受けたと語る20世紀のとある芸術思想が持つ破壊や否定の精神に由来。

DENIM JACKET ¥120,000 (ISETAN SHINJUKU)






アーティスト、詩人、ミュージシャン、フィルムメーカーなど、様々なジャンルのクリエイター達とファッションデザイナーとが共同で作り上げているブランド。衣服以外にもオブジェクト、ペインティング、ビデオワークなど、多様なアウトプット活動を行っている。本プロジェクトではホワイトTシャツをキャンバスに、力強いメッセージがプリントされたシルク生地を縫い付けることにより、アート作品のような存在感を放つ一枚をリリース。

T-SHIRT ¥23,000 (ISETAN SHINJUKU)






フューチャリスティックな素材を用いながらも、「あくまでデイリーに着られるように」と仕上げられたエプロン風のドレス。東京を拠点にするデザイナーは、本アイテムについて「シンプルに、素材の質感とその組み合わせを楽しみました」と語る。「素材とデザインの関係を吟味すること」をモットーとするブランドらしさが詰まったこの一着から、デザイナー像を想い浮かべてみるのも面白い。

APRON DRESS ¥47,000 (ISETAN SHINJUKU)



ANTI EASY ~考える服~

「衣服そのものに宿るアイデンティティとは?」というコンセプトを元に、世界各地の旬なデザイナー7組に限定アイテムの制作を依頼。ブランドロゴが分からないような工夫がなされたこれらのアイテムは、伊勢丹新宿店のみで入手可能な超スペシャルなもの。デザインに惹かれ、デザインから感じ、デザインを楽しむ。そんなファッションデザインの根源を楽しむことが出来るプロジェクトだ。

2018年3月13日(火)まで開催中

伊勢丹新宿店本館3階=センターパーク/プロモーション

03-3352-1111(大代表)