こんな、どこにでもあるような、穏やかな日常のワンシーン。森栄喜の写真を見ていると、被写体の東京に暮らす若い男の子達の日常が、いつかの自分の日常のワンシーンと重なるような感覚を覚える。森が東京に住む若い男の子達を訪ねて、彼らの日常をとらえた『TOKYO BOY ALONE』(2011年/ナナロク社)や、森自身のパートナーとの1年間の共同生活をとらえた『INTIMACY』(2013年/ナナロク社)の作品中では、こぼれ落ちていってしまいそうな、愛おしい日常の一瞬一瞬が、丁寧に写真に収められている。微睡んだような男の子達の表情に、気が付くと吸い込まれていって、彼らのエモーションと一体化してしまう。そうさせるのは、誰かを愛おしく想うという人間の根源的なエモーションが、森の写真に焼き付けられているからだ。話をしたり、手を繋いだり、メールをしたり、抱き締めたり、どんなにささやかなことでも、人間は自分が愛する人との時間を大切に思う。生きるという孤独を、私達は寄り添う合うことで、乗り越えていけるのだ。
なるべく自分と同世代であるということを意識して、身近な友人達を中心に協力してくれる人を探しました。『TOKYO BOY ALONE』を撮っていた頃は、自分も若者で、被写体も若者達でした。だから同じ目線に立って写真が撮れた。今は、自分世代が家族を持つ年齢になったので、若者よりも結婚して子供のいる親達の方が、被写体として自然に撮れるようになったのだと思います。
『TOKYO BOY ALONE』にしても『INTIMACY』にしても、森さんの作品は、そこに住む人達の孤独や哀愁を繊細に写真にとらえることで、間接的に、東京という都市のポートレイトをも描き出していたと思うのです。『FAMILY REGAINED』でも別の観点から、東京という都市のリアリティが見えてくるような気がしています。
パフォーマンス作品上映 『FAMILY REGAINED: THE SPLASH-WE BRUSH OUR TEETH, TAKE A SHOWER, PUT ON PAJAMAS AND GO OUT INTO THE STREET-』
会期:10月1日(日)~ 29日(日)
会場:NADIFF GALLERY
東京都渋谷区恵比寿1-1w8-4 NADIFF A/P/A/R/T 地下
パフォーマンス作品上映『FAMILY REGAINED: THE PICNIC』
会期:11月4日(土)~ 12日(日)
会場:池袋西口公園 東京都豊島区西池袋1-8-26