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ISSUE 7

アーカイヴ、アーカイヴ、アーカイヴ。

世界中のファッションシーンで空前の「アーカイヴブーム」が巻き起こっている。どこもかしこもアーカイヴ。立ち上げから数年しか経過していないブランドが開催する在庫一掃セールまでが、「アーカイヴセール」という名目で執り行なわれている。本来であれば、数十年以上の年月を経て蓄積され、日の目を見る機会が少なくなってきている何かを一つのヴィジョンの下に一箇所に集め、編纂し、一般（もしくは限定的に）公開することで、その蓄積物を「アーカイヴ」と定義するのではないだろうか。それらに多くの人が触れ、分析し、楽しむことが出来る、社会的に意義のあるものこそがアーカイヴとされるはずなのだが、2018年現在、単にオシャレなトレンドワードとして「アーカイヴ」が蔓延してしまっていることは残念ながら否めない。

そんなチャラついたアーカイヴブームが巻き起こるずっと前から、その言葉の持つ重要性を認識し、ヴィンテージアイテムの収集・販売をしてきたのが東京を拠点にするライラ（LAILA）だ。YVES SAINT LAURENT RIVE GAUCHEから、MAISON MARTIN MARGIELA、HELMUT LANG、RAF SIMONSに至るまで、そこにはファッションにまつわる膨大な近代史が凝縮されている。日本において、ライラよりも会社規模の大きいファッション関連会社は星の数ほどあるかもしれないが、世界のファッションシーンに与えている影響力でいえば、ライラを超えることが出来る会社は某C社くらいだろうか。

彼らは来店者とインスタグラム用にセルフィー写真を撮影することはしないが、某デザイナー、某セレブリティ、某モデル……、ライラを訪れるファッションVIP達の数は秘かに増え続けている。彼らがライラで入手し、後に着用したアーカイヴピースはネットオークションでその価格が急激に高騰することは数知れず。デザイナー達はライラで手にしたあの服やこの服を元ネタに、新シーズンのコレクションを作っているケースも少なくない。あらゆるファッションピープルがライラを訪れ、そこで目にしたもの、手にしたもの、入手したものを元にして、自身のファッション活動に120％生かしているのである。ライラの活動はそのようにしてファッションの表舞台に秘かに大きな影響を与え続けているのだ。

重要文化印刷物。

しかし、トレンディな事象と共存することを心地良く感じない彼らは、世の中の流れに乗っかった金儲けをするわけでもなく、次なるプロジェクトを静かに立ち上げた。それがPRINTINGS.JP（プリンティングス）。そう、“静かに”立ち上げるはずだったのだが、世間的なアーカイヴブームの流れがその新プロジェクトを見過ごすはずもなく、業界はかなりざわついている。

PRINTINGS.JPは、彼らが所有する印刷物のアーカイヴを一般公開し、販売するオンラインベースのプロジェクト。絶版になったブランドブック、市販されなかったカタログ、入手困難なヴィンテージ雑誌など、それらをウェブサイト上にてキュレーション、販売している。それだけでなく、もう一つ重要な事業がある。それは彼らが所有する膨大な服を印刷物のフォーマットに纏め、自社で制作、出版、流通までをも取り仕切るというもの。その第一弾としてリリースされたのが、RAF SIMONSのアーカイヴを纏めた『1996-2001 / 2001-2006』だ。二冊がセットになっているこのアーカイヴ本は、一冊目にラフがデビューから一時休止するまでのアイテム、二冊目に復帰からJIL SANDERを手掛ける前までのアイテムを集録。手の込んだ物撮影写真が延々と続くその本には、現代メンズウェアの原石ともいえるピースの数々がぎっしりと詰め込まれている。

本プロジェクトの裏には、服のキュレーションや販売だけにとどまらず、それらの服が持つ歴史的重要性をしっかりと後世に語り継いでいきたいという、ライラ社の社会貢献的意志が潜んでいる。世界各地の美術館や展覧会などに服を貸し出す機会も増え、こうしたプロジェクトを立ち上げるに至ったという彼らは、今日現在もまた次なる出版プロジェクトを水面下で進行させている。彼らの意図と反比例するように、そうしたプロジェクトもファッションのメインストリームが放っておかないのかもしれない。いずれにせよ、それらの印刷物が重要な資料となり得ることは間違いないだろう。そして、多くの人々がそこから何かを学び取り、影響や感銘を受け、ファッション界の美しき未来のために活用してくれることを強く祈りたい。ー

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