THE HANY

ドレスに託された“カワイイ”の感覚。
PHOTOGRAPHY YASUNARI KIKUMA
INTERVIEW TEXT RISA YAMAGUCHI
the-hany


子供の頃、思い描いた夢は何ですか?女の子なら一度は夢見たことがあるのではないだろうか、素敵なウェディングドレスを着てヴァージンロードを歩くことを……。カラフルでデコラティヴ、そして唯一無二なデザインが若者から絶大な支持を受けているウェディングブランド、THE HANY。“純白”なウェディングドレスのイメージを覆したデザイナーの伊藤羽仁衣は、如何にして女の子の憧れをクリエイトし続けているのだろうか?

「実家が洋服屋さんだったので、小さい頃からファッションショーを見に行ったり、お洋服を父に作ってもらうような環境で育ちました。3歳の時からデザイナーになるのが夢で、森英恵になりたかったの(笑)。父に『勉強はしなくてもいいけれど、デザイン画を描きなさい』と言われていて、一日に三体はお洋服の絵を描いて、20歳の時までずっと父に提出し続けていたんです」。ファッションの家庭内英才教育を受けながら育った彼女は、高校卒業後にファッションの専門学校、ドレスメーカー学院に通うことに。「父は『デザイナーは縫えなくていい。想像力が全てだから、お友達を作って楽しめ』って。なので、本当に遊んでばかりだったので、『あの羽仁衣が本当にデザイナーになったの!?』って学校の先生もビックリしていたみたいです(笑)。卒業後は一般企業に就職しようと思っていたのですが、父に相談したら『他の企業で働くんだったら、僕の横にいた方が勉強になるよ』って言われて、実家の洋服屋さんを手伝いながら、ちょうど海外にも展開していたので、一緒に工場を見に行ったり、色々な経験をさせてもらいました」。

恵まれた環境で育ち、幼い頃から本物のファッションに触れることで審美眼を養ってきた彼女は、ファッションデザイナーではなく、何故、ウェディングドレスデザイナーとしての道を歩む決意をしたのだろうか。「ファッションデザイナーになりたいと漠然とは思っていたんですけど、実際にどんな洋服が作りたいのかが分からなくて……。20歳の頃に観に行ったファッションショーで、最後にウェディングドレスが登場して、それを目の当たりにした瞬間、『絶対にウェディングドレス!』と思ったのが最初のきっかけですね。父にそのことを話したら『今すぐやれ!』って言われて、22歳の時にお店を出して(笑)。札幌でHANY WEDDINGというお店を出させてもらって、親に3年間だけ面倒を見てもらいました。ある程度分かるようになってきた矢先に、父が急に亡くなってしまったんです。父がいたからこそ、好きなウェディングドレスを作って、好きな世界観でやってこれたので、絶対に成功させなければという思いもあり、母の反対も押し切って、銀行からお金を借りて別会社を立ち上げ、東京にお店を出しました」。

29歳の若さで東京・青山の一等地にHANY WEDDINGの姉妹店、THE HANYを出店。しかし、順風満帆だった人生が一転したのもこの時期だったと振り返る。「札幌にお店を出してから勿論、小さい苦労は沢山あったんですよ。クレームは来るし、専門用語も分からないし、勉強もしないで始めたので、最初は本当に大変で……。勢いで東京に出店したはいいけれど、次は経営の知識が無い上に、東日本大震災が起きて、経営状態も悪化してしまいました。でも、そんな時に『情熱大陸』さんの取材を受けたりして、少しずつですが知名度も広がり、今年、ブランド設立15年目を迎えることも出来ました」。

今まで何組ものカップルの挙式を見届けてきた羽仁衣自身も、2年前に入籍。結婚に対して特別な憧れがあるのだろうと思いきや、意外な答えが返ってきた。「憧れは全く無いんです。結婚式って凄く重くて、深いものだと分かってはいたけれど、いざ自分が経験して、改めてドレスを作るということに対して責任感が湧きました。(人間は)生まれてから色々な儀式があるけれど、お葬式までの間で二人で出来る儀式って結婚式しかないの。他は全部一人でしょ? 結婚式を挙げられる資金があるのなら、ドレスを着る着ないを抜きにして、愛されている人達と時間を共有出来る結婚式は、絶対に挙げて後悔は無いと思う」。

現在は、他企業から真似される程、ウェディングドレス界にその名を浸透させたTHE HANY。今後はアジア圏を中心とした海外マーケットへもチャレンジしていくのだろうか? 「アジアの強みは、本当に“カワイイ”だと思うんです。身体のラインが綺麗に見えるウェディングドレスも勿論好きなのですが、アジアの小柄な一般体系の女性が着て、セクシーに見えるかっていうと、やっぱりどこか可愛らしさがあったり、柔らかさがある方がアジアの女性に映えると思うんです。THE HANYのドレスは、きっと日本人やアジアの“カワイイ”と褒められる人達に似合うドレスだと思うんですよね」。

最後までどんな質問にも笑顔と共に答えてくれた彼女に、本名だという「羽仁衣」の由来について尋ねてみた。「『21世紀は女の子の時代だから、世界中何処に行っても愛される名前がいい』と言って、父が『羽仁衣』と付けてくれたんです」。国境や文化を越え、THE HANYがあらゆる女性達から愛され、可愛らしさ溢れるそのウェディングドレスを世界中で目にする日もそう遠くはないだろう。


THE HANY


HAIR HIROKI AT W.
MAKEUP SHINO ARIIZUMI.
HAIR ASSISTANT IZUMI KAMIKAWABATA.
MAKEUP ASSISTANT CHIHIRO YAMADA.
RETOUCHING KANAKO SATO AT VITA INC.
STUDIO ASSISTANTS HAN GIL RYUNG, YUJIRO TOKUSHIGE, AKARI ENDO AT IINO MEDIAPRO.
MODEL AYANO ANDO AT NAME MANAGEMENT.
SPECIAL THANKS TO HITOSHI NAKANE AT IINO MEDIAPRO.