HIROKI NAKAMURA

中村ヒロキ 3/3
ISSUE 1
INTERVIEW TEXT JUNSUKE YAMASAKI
中村ヒロキ
VISVIM / WMV クリエイティブディレクター


VISVIMという名のライフスタイルへ

以前「一点一点の手作り的感覚を大量生産商品にも入れていきたい」と話していらっしゃいましたが、今現在、その達成率はどのくらいでしょうか?

結構いいところまできてますよ。たまにハンドペイントを入れたTシャツの説明をするときに「これはハンドペインティングです」って言うと、その意味がわかってもらえないんです。「オリジナルのグラフィックを手で描いたってことでしょ?」みたいな顔をされるんですけど、「そうではなくて、一つ一つが手書きなんですよ」って。Tシャツ自体は工場で縫われていますけど、そういうことが今でもまだできるんです。今現在に可能な作り方で、人間味のあるものを作ろうと思ってベストを尽くしていますよ。例えば、昔の学級新聞ってすごくチャーミングじゃないですか。子供たちが手で作っていて。いうなれば自分たちが作る初めての“メディア”ですよね。そういうものにはコマーシャルなものにはない、チャーミングさとか“honest”さといった魅力があると思っています。それをいかにコマーシャルなものとしてやっていくか? そこがチャレンジだと思うんです。今の時代にできる精一杯のことをやっていくことが大切ですよね。


そうした制作過程で日本の工場さんや職人さんたちと働く機会があるかと思いますが、他の国の方々との差異や、日本人独自のオリジナリティがあるとすれば、それは何でしょうか?

やはり日本は職人気質の方が多いですから、物事を突き詰めてやろうとする姿勢の平均レベルが高いですね。どんな仕事をしている人でも、そのサービスのレベルやクオリティを高めることに喜びを感じている人たちが多いように思います。とにかく仕事を終わらせようとしている人たちや、単に仕事への対価だけを考えている人たちとは結果が変わってきますよね。それは素晴らしいことだと思いますし、日本の良い所かなと。さらに日本の職人さんたちにお願いしたものは、きっちり時間通りに仕上がってきますよね。


ヴィンテージのバンダナを用いたリメイクアイテムをリリースされていたと思うのですが、それは再利用の大切さを重視されたからなのでしょうか?

リサイクルというよりは、長く使いたい、残っていくものを伝えていきたいと思ってやっています。洋服だけでなく、建物とかも同じです。古ければ何でもいいというわけではありませんが、なかなかいいものが残っていかないですよね。商業的に採算が取れなかったりしますけど、そこでクリエイターやデザイナーが知恵を絞り、残せるようにしていきたいと思っています。例えば(取材場所だった表参道GYREにあるVISVIM店内に設置されている)このショーケースも1915年の商品で、今のこの商業施設の中で上手く使って、残していきたいんです。


最近はウィメンズライン、WMVもやられていますが、メンズとの違いについてお聞かせください。

見た目を重視しているものが多かったりするのか、ヴィンテージのレディスの洋服は残っているものが少ないんです。少し話は変わりますが、撮影で2シーズンほど一緒に働いてくれているモデルがいるんですけど、スタイリングをしていたときに彼がニコニコしていたんです。その理由を聞いたら「I feel good!」って言ってくれて、それを聞いて良かったなと思いましたね。僕はそのためにデザインをしているので。第三者からカッコ良く見られたいという気持ちもあるとは思うんですが、VISVIMのお客さんは自分自身が“good”だというふうに感じてくださる方が多くて、それがすごく大切で、そこがラグジュアリーだと思うんです。そしてその感覚を女性ともシェアしたいと思ったんです。ただ、男性のお客さんと一緒にいらっしゃる女性が、割と外側から作り上げられたものを着ているのを見ると、(VISVIMの服にあるような)コンセプトをシェアできていないんだろうなと。さらにレディスのアパレルであまりこういう感覚にアプローチしているものがないと思って、内側から作り込んでいくようなレディスの洋服を作ることを考えていたんです。WMVのデザインを担当している妻のケルシーは元々、服作りに必要なインスピレーション源になるようなものを探してもらっていたりしていたことと、彼女はデザインのバックグラウンドがあるので、レディスを一緒に手伝ってほしいとお願いしました。基本デザインは一緒にしているんですが、最終的なジャッジは奥さんにお願いしています。


以前、一般的にキッズの服は粗悪に作られているものが多いというお話しをされていたと思うのですが、VISVIMとしてキッズラインはやられないのでしょうか? さらに中村さんの考え方を貫いていくと、“VISVIM”という名のライフスタイル提案もできるのではないかと思うのですが。

いい考えですね、やってみたいですね。僕は洋服を通じて価値観やコンセプトみたいなものを提案しているつもりなので、それはもちろん子供ともシェアしたいですよね。それに子供と一緒にお店に来るお客さんが増えたらいいなと思っています。最近、僕らのスタッフや関係者にも家族や子供を持ったりする人が増えてきているんです。僕は「自然発生的」ということが重要だと思っているので、そういうことがオーガニックにできていったら素晴らしいですよね。


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