その後、DOVER STREET MARKETのNY店と銀座店でも販売され、回を重ねる毎に新たな手法が持ち込まれ進化するコラボレーション。その完成度に感銘を受けると同時に、僕の心ではどこか「カプセルコレクションではない、彼のシグネチャーブランドとしてのフルコレクションを早く見たい」という想いがひょっこりと芽生え始めていた。僕自身、彼が手掛けたSTUSSYのピースを誰よりも着倒したと自負するほど気に入っているし、90Sロゴカルチャーのリバイバルから、DIY的アルチザンな流れをブリッジした見事なコラボレーションであったことに疑う余地はないのだが、彼が人々に「STUSSYのリメイクをしているデザイナー」とのみ認識されることに少し違和感を持ち始めていたのも確かであった。
そんな中、今年2月に行われたセントラル・セント・マーチンズ(以下CSM)のMA卒業ショーにおいて、正式に彼自身の名を冠したコレクションが遂に発表され、続いて6月には「LONDON COLLECTIONS MEN SS17」期間中に単独でのショーも行われた。機能的ディテールを携えた現代のワークウェアやユニフォームをベースに、ミニマル且つコンテンポラリーに洗練されながらも、どこか手作業による独特のアート性を感じさせるこれらのコレクションで、彼は自身のレーベルの正式なスタートを高らかに宣言した。たった数年の間に4回のSTUSSYカプセルコレクション、学生時代の2回のショー、そしてファッションウィークでのデビューまでをこなし、並々ならぬスピード感と溢れ出るクリエイティヴィティでデザイナーとしての道を駆け上がってきた彼。今、キコ・コスタディノフに注目したい。
6月のコレクション「00022017」を発表した直後、DOVER STREET MARKETにて商品のリリースがありましたが、それは既存のファッションサイクルへのチャレンジといった意図もあったのでしょうか?
実は6月に発表したものを販売したのではなくて、2月に発表した「00012016」をアップグレードしたものだったんだ。6月に発表した「00022017」に関しては、DOVER STREET MARKET GINZAで先行発売した後、来年1月にはフルアイテムが発売開始される予定。だからまだ基本的にはファッションのサイクルに従っているといえるんだけど、より短いサイクルで商品化していくような、違った要素をコレクションに加えていく可能性は大いにあるね。