PALOMO SPAIN

アレハンドロ・ゴメス・パロモが創る男性服。
ISSUE 5
PHOTOGRAPHY & INTERVIEW TEXT LUIS VENEGAS
PALOMO SPAIN 1

PALOMO SPAIN 2

PALOMO SPAIN 3

PALOMO SPAIN 4

PALOMO SPAIN 5

PALOMO SPAIN 6

PALOMO SPAIN 7

PALOMO SPAIN 8

PALOMO SPAIN 9

PALOMO SPAIN 10

PALOMO SPAIN 11


あなたのバックグラウンドについて教えて下さい。

1992年4月13日生まれ、現在24歳です。スペイン・コルドバの30KM郊外、人口7,000人のラ・ポサーダという町で生まれ育ちました。17歳の時、以前から何度も夏を過ごしたことがあり、住みたいと思っていたロンドンに引っ越しました。最初はアルバイトをしていましたが、後にLONDON COLLEGE OF FASHION(以下LCF)でメンズウェアのファッション・デザイン・テクノロジーを勉強し始め、最終的に5年半くらいを過ごしましたね。そして昨年夏のヴァケーションでスペインに戻った時、大学を終えて改めてこれからの人生で何をしていこうかと考えました。そうして小さなスタジオを作るアイディアが浮かび、そこからやりたいことが決まっていき、ここで楽しく住みながら活動することにしたんです。


ロンドンは住むべき所だと言っていたと思いますが、具体的な理由をお聞かせ下さい。

15歳で始めてロンドンに行った時、ファッションに対する好奇心やカミングアウトなど、ちょうど自分自身に大きな変化があった時で、自分の知らない別の世界があるなんていうことを知りませんでした。そこにはスリムパンツを穿いた男の子達がいて、彼らにストリートで出会い、唖然とし、魅了されました。ファッションの世界で起こっていることに対してあまりにも無知だったこともあり、彼らのそのようなファッションを見て、この町のファッションの活気を知り、この街に住みたいと思ったんです。思春期真っ直中の16~17歳の頃には、確かな意志を持ってロンドンに行くために英語を勉強していました。


一方で、ラ・ポサーダも良い所だと言っていましたよね。

そうですね。16歳の知的欲望を持っていた頃の僕自身にとって心地良い場所でしたし、ロンドンでの生活を経て戻って来て、この田舎に住みながら仕事を出来ていることが幸せです。それにとても自由です。小さな荘園の建物内に「小さな世界」といえるようなアトリエがあり、外の村と比較すれば全くの異世界があるんです。ただ小さい頃、こんな田舎町では今のように理解されるようなことはなくて、変人扱いされていました。だからここから出て、外の世界や人達のことを知りたいと思っていましたね。


どこでファッションに対する興味が生まれましたか? 家族の影響か何かですか? オンライン上の情報、ファッションショーや雑誌でしょうか?

僕の家族はファッション業界とは全く関係がありません。おばが少し裁縫をしていましたが、そうした環境の中で育ったわけではありません。でも小さい頃からバービー人形に衣装を着せて、毎日のようにスケッチをしていました。4~5歳の頃の写真を見ると、プリンセスのドレスなどのスケッチが、床いっぱいにあるんです。6~8歳の頃のノートには、様々なコスチューム、バッグやシューズなどをコーディネイトしたファッションスケッチで埋め尽くされていました。その当時、父親が僕に「ファッションデザイナーにならなきゃね」と言ったんです。


そんなことを言ったのですか?

はい。その頃はそんな仕事があること自体も知らなくて、ファッションデザイナーの人に会ったこともありませんでした。その後、テレビで観たイヴ・サンローランの最後のファッションショーは特に記憶に残っています。それはとても感動的なものでした。そして父親が話してくれたYVES SAINT LAURENTの歴史や、結婚前にYVES SAINT LAURENTのものをプレゼントした話などから更に魅了されましたね。7~8歳の頃にテレビでファッション番組が始まり、ジョン・ガリアーノにも魅了され始めました。バービー用にガリアーノ風コスチュームを作ったりもしていましたね。


幼い頃はバービーのために服を作っていたかと思いますが、そこから男性服を作るように変わっていったのはいつ頃のことですか?

おそらくロンドンに移った頃だったと思うのですが、男性のために服を作りたいと認識しました。男性の考え方、男性の身体、男性と一緒にいて感じることなど、明確に理解出来た頃です。それにウィメンズファッションは少し変わった世界で、その仕事内容も結構大変です。僕はボーイフレンドをはじめとする、インスピレーションになり得る沢山の男性達に囲まれていることもあり、男性のためのデザインをするのが自分自身の役目だと思っています。


あなたの成功は偶然でしょうか? それとも綿密に計算されたものでしょうか?

全て偶然だと思います。というのも、僕はきちんと考えたりはしていないんです。今この状況を、一年半前には想像もしていませんでした。確かに成功を追い求めてはいますが、このような評価をされるとは思ってもいませんでしたね。僕はメンズウェアを勉強してきて、ここまでに学んだクリエイティヴプロセスのまま制作しています。頭の中はメンズウェアだけで、ウィメンズウェアのデザインは忘れてしまいましたね。卒業コレクションで発表したウィメンズウェアはありきたりで、評価されませんでしたし。ただ、メンズウェアをデザインをする時も、それが成功するかとか、マーケティングがどうとか、僕はそういうことが全くダメで、所謂“準備”をしたことが無いんです。


アンダルシア州・コルドバにある小さな村をベースに作るメリットとは何なのでしょうか?

ここには不思議な魅力があります。ここにいることで、全てから距離を保つことが出来ます。他に何もすることがないので、本能のままに自分のしたいことに集中出来るんです。それに人間的かつ、深い繋がりを持つことも出来ますね。


それこそがPALOMOと他ブランドの異なる一点で、ある意味スピリッツでもありますよね。それに加えてスペイン南部にあるという影響もありますでしょうか?

そうですね。色使い、そしてアンダルシアの伝統的裁縫などからの影響がある思います。


あなたの作る服はオートクチュール的ですよね。

オートクチュールにも魅力を感じていますし、いつか挑戦したいとは思っています。ただそれ以前に、常に自分自身に厳しくありたいと思っているんです。ガリアーノのインタビューを聞いた時には、穴があったら入りたい、そんな気持ちになってしまいました……。もちろん彼のような偉大なデザイナーになりたいとは思いますが、それは大きな夢であって、まだまだ道程は長いですね。


「小さな世界」と形容していたあなたのアトリエについて教えて下さい。

コルティッホと呼ばれる田舎の家は大きく、街道沿いに位置していて、アンダルシア風のオレンジの中庭が付いた二階建ての家で、かつては家具の製造会社として使われていました。母が8年間ここに勤めていたんです。10年間使われていなかったので、母経由でアプローチしてオーナーから借り、5ヵ月前に契約しました。オーナーは売りたがっているんですけどね。敷地面積は5,000平方メートル、建物自体が3,000㎡といった広さです。従業員は、パターンのチーフを務めるマリア・ルイサ、縫製担当の女性が二人、パターンのインターンをしている男子が一人、それからオンライン業務などを担当するペドロというスタッフがいます。


10人もいない少数チームなのですね。話は変わりますが、2月にNYでのファッションショーもありますよね。世界中から寄せられる反響について、どう感じていますか?

とても元気付けられています。コレクションを見た人達が評価してくれたり、気に入ってくれたり、遠くの国々まで届いているということはクリエイターにとって最高に嬉しいですよね。ただ、アトリエでは初心を忘れることなく黙々と制作を続けています。僕ら自体は何も変わっていません。毎日スタッフの皆と一緒にいて、1点ずつ丁寧に作り続けています。


仕事内容で楽しい部分、そして退屈だと感じる部分について教えて下さい。

私にとって楽しい仕事は、アイディアを紡ぎ出すこと。それは一つの完結したストーリーで、まず主人公について考えることからスタートし、スケッチをしていきます。ファブリック選びも楽しいですね。色々な場所へ出向き、多くのことを学びます。好きでない仕事内容といえば、プライスのこと、メールや電話のやり取りといった事務関連でしょうか。NYでのファッションショーのオーガナイズも結構苦労しています。もしこれがマドリードだったら、もっと大きな規模のものだったとしても、簡単に実現できるのに……。


PALOMO SPAINはどこで売られていますか?

NYとLAのOPENING CEREMONY、東京のGRAPEVINE BY K3、マドリードのEKSEPTIONなどです。ちょうどオンラインショップについてもリサーチ中で、開設することでより多くの人達に見てもらえるようになるかなと思っています。奇抜なコスチュームデザインのような服ばかりだと思われがちですが、ブティックではウェアラブルなデザインのものも購入することが可能なんです。


ブランドロゴをプリントしたスウェットのような商品アイディアを考えたことはありますか?

そのような馬鹿げたことをやったことはあります。ブランドロゴを背中部分に刺繍したもので、凄く評判は良かったんですけど、僕がやりたいものではなかったですね。クラシックなシャツを作ることはあるかもしれませんが、ブランドロゴを全面にプリントしたスウェットを作ることはないと思います。


例えば、近い将来、「CHRISTIAN LACROIXで働かないか?」というようなオファーがあったら興味はありますか? それとも自分のブランドだけをやっていきたいですか?

それは夢のようなことですね。これはいつも言っていることなんですが、CHRISTIAN  LACROIXのメンズウェアを作りたいと思っているんです。ただ、今はまず自分のブランドを安定させ、世界中の都市で販売されるようになり、明確なブランドイメージを定着させることが最優先ですね。僕のやっていることは、これまで男性達が楽しむことが出来なかった全く新しいものを創造することなんです。


どんなセレブリティにPALOMO SPAINを着せたいですか?

大昔でいえばオスカー・ワイルド。後はマイケル・ジャクソン。この二人が断トツですね。その他でいえばミック・ジャガー、デヴィッド・ボウイでしょうか。


PALOMOSPAIN.COM


FASHION EDITOR DAVID HERRÁEZ.
MODELS ALEJANDRO PORTO, ÁNGEL HUETE, ELLIOTH VERA, LUIS MBA, MARINA HERMOSILLO, RODRI LAGUNA AT FRANCINA MODELS, RYTAS MATULIAUSKAS.
SPECIAL THANKS TO DMNTIA, PEDRO AGUILAR DE DIOS, TERUMI MORIYA.