ALYX IN PARIS

FREEーPARIS
ISSUE 8
PHOTOGRAPHY & TEXT JUNSUKE YAMASAKI
フランス・パリでの初舞台裏。


ファッションは本音と建前が入り乱れている。いや、実際は建前が99%くらいを占めているのかもしれない。デザイナーに関していえば、その人の人格は尊敬出来ても、作るものが尊敬出来ない場合も多い。人格は否定したくない。けれど、作ったものを褒め称えるこも出来ない。とはいえ、ここで「本音」という言葉に置き換えた自分なりの「真のファッション評価基準」というものが、そもそもファッションにおける“善”でない場合だってあるかもしれない。もちろん自らの意見は100%と思って発しているものではあるが、それが100%の善であることなどあり得ない。


ファッションは裏話も噂話も多い。そこに真実が潜んでいることも多々あるが、あくまで“裏”や“噂”であり、表舞台で語るべきものではなかったりする。しかしそういったオフレコ情報も踏まえて、ファッションにおける善悪を判断し、善を報じ、悪を報じないことで、自らの思い描くファッションにおける善を広めていければ、と常日頃考えている。


少し回りくどい説明になってしまったかもしれないが、ここ数年で「報じるべき」と強く感じてるブランドの一つがマシュー・ウィリアムス手掛けるALYX(アリクス)だ。と書いてはみたが、これは少しだけ間違った説明なのかもしれない。何故なら、ALYXの創作活動を支えているのは決してマシューだけではない。妻のジェニファーをはじめ、彼らの親戚までもがチームの一員となり、ブランドの骨子が成り立っているのだ。彼らほどチームが結束し、実際に家族をブランドの核として創作活動を行っているようなブランドは少ないだろう。


GRAILEDに纏めらているマシューの略歴を是非読んでみてもらいたいのだが、彼はファッションデザインを学んできたわけでも、プロダクトデザインを学んできたわけでもない。音楽や写真、ストリートファッションなど、様々なジャンルで活躍しながらも、同時に多種多様な物事を習得し続けている謙虚な勉強人だ。その姿勢は今現在も一切変わらない。工場と密にコミュニケーションするべくイタリアのフェラーラに移住し、ファッションデザインに向き合うその姿勢は、究極の物作りギークであると同時に、真の芸術家でもあるといえる。


そんなALYXが初のランウェイショーをパリ・メンズファッションウィーク期間中に行った。傍から見れば、トップセレブ達が出席した注目ショーの一つに過ぎなかったかもしれない。しかし、そこにはブランドとセレブリティとの深いリレーションだけでなく、革新的ファッションの感覚をも垣間見ることが出来た。マーケティングツールとして乱用されることも少なくないブランドロゴを前面に押し出す代わりに、極端なまでにシルエットを追求し、工業製品に見られるようなディテールワークをも駆使することで、独自の言語を確立しようとするALYX。彼らが披露した初ランウェイショーの裏側では、研ぎ澄まされたクリエイションだけでなく、ブランドの根底に流れる家族愛をも目撃することになる。
























































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