HELMUT LANG ARCHIVES FANZINE | RYOHEI KAWANISHI

川西遼平 9/12
ISSUE 6
前号のRAF SIMONSに続き、本号ではヘルムート・ラング本人が手掛けていた頃のHELMUT LANGのアーカイヴピースに着目。国内外のコレクター達が各々の感性をたよりに、それらの貴重なピースの数々を撮影。 ブランドを象徴するミリタリーやデニム、スリット入りトップなど、機能性とデザイン性が共存する美しきヘルムート・ラング・デザインに今、大きな注目が集まっている。


RYOHEI KAWANISHI
川西遼平(デザイナー)
@RYOHEIKAWANISHI

アイテムにまつわるエピソードや、気に入っている点などをお聞かせ下さい。

オレンジデニムジャケットを購入し、着始めたことをきっかけにオレンジ好きになりました。よく、自分のコレクションにもオレンジを出している理由の一つです。

レッドストライプデニムジャケットは、自分がまだ学生だった頃、ある人がこのジャケットを着用していて「頂戴」と頼んだら「駄目だ」と言われたので「もし僕がプロのデザイナーになってアナ・ウィンターと会えるようなことがあれば譲って欲しい」と言いました。そしたら「絶対無理だからそれなら良いよ」と言われ、去年アナ・ウィンターと会うことが出来たので、約束通り貰えることになりました。

ダウンジャケットは、ニューヨークで大雪が降った日に友人のスタイリストが「寒いから着て帰りなさい」と譲ってくれました。

白いパンツは7年前にヘルムート・ラングが誰かも知らずに購入しました。

ヘルムート・ラングというデザイナーについて、あなたの考えをお聞かせ下さい。

ここ数年、HELMUT LANGを見返そうと思っていたのは何故だったのだろうか。フィービー・ファイロのCÉLINEからHELMUT LANGが見えたからだったのか、カニエ・ウェストのコレクションやPROENZA SCHOULERなどニューヨークのデザイナーが挙って、リファレンスしていたからだろうか。

LANDLORDを始める時に過去のコレクション画像やランウェイのビデオを見返していました。デザインはするけれど、なるべくデザインをしないように心掛けていたのでよく参考にしていたことを覚えています。何処かで見たことあるような服だけど何かが違う。そんな違和感のあるデザインをHELMUT LANGの服から見出していました。「あー、ここのポケットを無くすんだ。この形にその色、素材を当て込むんだ」など敢えてスティッチを入れないことで違和感を作ったりすることを学びました。

90年代から2000年代の途中まであったスペクタクルなヴィジュアルをファッションデザイナー達が捨てて、ミニマルでウェアラブルかつコストをかけずにベストなヴィジュアルを作るようになったと思える2010年代。多くのコレクションデザイナー達がその答えをヘルムート・ラングの作品から見出そうとしていたのだと思います。ミニマルでありながらアヴァンギャルド。そんな空気感をあの足し算ばかりのようにデザインしていたと思える80年代から90年代に淡々と作り続けていたヘルムート・ラングのデザイン。着飾るというよりも着ることでその場所に馴染みながらもちょっとした違和感でデザインを加える。文章で書いてみると、更にお洒落だなと感じました。そんな彼がデザインを始めたきっかけが、自分に合うTシャツとパンツを探しに洋服屋に行ったら着るモノが無かったからだという理由も素敵だと思います。






ORANGE DENIM JACKET FROM AUTUMN / WINTER 2003-04






DOWN JACKET FROM 1998






RED STRIPE DENIM JACKET FROM 1996






WHITE TROUSERS FROM 2003


PHOTOGRAPHY KOHEI KAWANISHIMA