INTERVIEW WITH CHIKASHI SUZUKI

写真家人生の分岐点とは? 2/3
INTERVIEW TEXT RISA YAMAGUCHI
今までで最も思い入れのある撮影を教えて下さい。

芸能人を初めて撮ったのが菊池凛子さんで、『PURPLE』の撮影だったのですが、スタイリストの北村道子さんと三人だけで撮影したんです。メイクさんなどもいなくて、その日は台風が近付いていたのですが、80万円くらいするコートを着て新宿御苑で撮影しました。台風だったので誰もいなくて、良い写真も撮れて、そこから女優さんを撮れるようになり幅も広がりましたね。それ以前は芸能人や外国人モデルを撮らないと決めていたので、日本に帰国してから自分の中で一番大きい出来事でした。


それまでは何故、芸能人や外国人モデルを撮影しなかったのでしょうか?

『PURPLE』の仕事で、某ブランドとのタイアップ撮影を頼まれた時、ブランド側から「絶対に白人モデルで撮影して下さい」と言われたんです。理由を聞いたら「日本人モデルはキャラクターがあるので、そこに引っ張られてしまうから」と。その時はかなり揉めたのですが、結局顔を写さないように撮影したと思います。その時、絶対に白人モデルは撮らないと決めて、その先十年くらいは白人モデルは撮らなかったと思います。ヨーロッパなどでは良いモデルが沢山いますが、日本に来日する白人モデルは限られていて、その中で良いモデルを起用しようとなると他の雑誌社と同じになるんです。折角日本にいるのなら、アジア人の良いモデルを探せば良いと思いました。なので、日本のエージェンシーには「売れていないモデルのリストを下さい」と言っていました。若い時はどうしても芸能人に引っ張られてしまうので、ミュージシャンなどは別ですが、所謂女優さん、俳優さんも十年くらい撮らなかったです。なので、全く儲からなかったですね。


女優さんなども撮られるようになってから、その中でも撮影したいと思う人はどんな人ですか?

その子自身にポテンシャルがあるか無いかです。60%くらいで現場に来て、伸び代がある子が撮影になると120%になる。そんな子を撮影したいです。後は日本だけでなく、インターナショナルに活躍出来そうな子と仕事をしたいですね。その子が海外に行く仕事のきっかけになるのが一番面白いです。


ファッション業界に長年いて、最も大きな変化を感じた出来事は何でしょうか?

全てが変わったと思ったのは9/11(アメリカ同時多発テロ事件)です。世の中もファッションもアートも全て変わってしまいました。それまでは大御所フォトグラファーは膨大なギャランティを貰っていたんです。彼らのギャラがあまりにも高くなって、アンダースや僕とかにもキャンペーン広告の依頼が来ていたくらい。当時はちょうど『PURPLE』や『SELF SERVICE』という新しいアプローチが出て来たので、アートから見たファッションという写真が受け入れられていて、商品を見せるというよりは、ふんわりとしたイメージでもOKでした。9/11以降、世界がどうなるか分からないという危機感から、大御所フォトグラファー達が一気にギャラを下げたんです。モデルもフォトグラファーも競合という考え方を無くして、ギャランティも下がって、ファッションの流れも物メインでの写りが主流になりました。今は少し自由度が戻ってきたと思いますね。


写真を撮っていなかったら何をしていたと思いますか?

料理とかが良い気がします。決まったものしか作れませんが、料理はします。料理好きのフォトグラファーは結構多くて、9/11以降、やっぱり仕事がし辛くなってシェフに転職したカメラマンもいるほどです。エキシビションの時に自分が作った料理を振る舞うフォトグラファーもいますし。写真はそこにあるものを撮りますよね。フォトグラファーと似ている部分があって、良い食材を使って料理をすればそこそこ美味しいものが出来上がるし、写真も良いモデルだったらそれなりに見えます。それを選ぶ目の方が大事かもしれないです。良いものをそのまま使うのではなく、「こうした方が面白い」というような発想や想像力が大事かもしれないですね。


本当にその通りだと思います。今はその見極めが出来ない人が多いように感じています。ソーシャルメディア上のフォロワー数や、肩書きだけで判断してしまいがちですよね。

その人を順調に育てようとかではなく、青田買いで起用して、ブームが去ったらまた新しい人に移る傾向がありますけど、本来は良いと思った人を育てていかなきゃいけないんです。今はそういう余裕が無いので、例えばフォトグラファーでも才能はあるけれど、仕事が欲しいので、雑誌撮影だと気を使って何かに似ている写真に近付けてしまったり。育てる風潮が無く、メジャーにいって消費されてお終い。そうした状況がそろそろ変わっていかないと駄目な気がします。


最近では映像も撮られていますよね?

適当ですけどね(笑)。でも映像の仕事は面白いです。何か言葉があるストーリーは作れないですけど、ネット社会になり、視聴者は動画に長くは集中出来なくなったので、1~2分の短編動画を作るのは凄い好きです。編集はいつも組んでいる子とやっているのですが、凄い無茶な編集を頼みます(笑)。ネット社会になってからの動画は自由度が広がって良いと思います。初めての動画作品はHAVE A GOOD TIMEの撮影で、俳優の染谷将太君を起用しました。それ以前もAMAZONで3万円くらいで購入したCANONのカメラで遊びで撮っていて、よく分からないのでシャッタースピードとかを異常に速くして撮ると、映像が速過ぎてカクカクするんです。その歪んでいるのが面白いと思いました。機材の一番駄目な部分を利用するのが好きですね。そこが皆がやらない所ですから。ハーフカメラも昔だったらフィルムの画像が粗過ぎて駄目でしたが、フィルムのハーフだと並びが変なので、これは使えると思いました。それがちょうど9/11の後だったので、洋服が全て写っていないと駄目で、そうすると結局素立ちになるのが凄い嫌で、ハーフだったら二画面ですし、画として成立させられるかなと思いました。





















CHIKASHI SUZUKI