J-NERATION / TENKO

点子 8/9
ISSUE 1
INTERVIEW TEXT NAOKI KOTAKA
tenko

PHOTOGRAPHY HANAYO


点子
ACTRESS / MODEL


旅を続ける少女

「今の年齢なのか頭が考え事でいつもいっぱい。ちょっとでも書きます」。点子のブログ(pettenko.tumblr.com)の冒頭には日本語、英語、ドイツ語、ロシア語の四ヵ国語でこう綴られている。「学校のテスト」「モデルの仕事」「自分のアート作品」「インターネットで見つけたインスピレーション」など、彼女のtumblrサイトへの投稿を見ていると、目まぐるしい彼女の頭の中をそのまま覗いているかのようだ。思春期という大人と子供の間で、日本とドイツという二つの母国の間で、モデルとしての自分と普通の高校生としての自分の間で、18歳の少女は何を考え、どのように自分のアイデンティティと向き合っているのか? 高校卒業後はNYに移住するという彼女にとって、高校時代を過ごし、モデルという仕事に出会った東京とは、いったいどのような場所なのか? 英語と日本語を交えながら、頭に浮かぶイメージに正直に、適切な言語と言葉を選択しながら、今回のインタビューに点子は答えてくれた。

「成長するにつれて、自分が日本人なのかドイツ人なのか、だんだんよくわからなくなってきたの。ベルリンに住んでいたときは、1年に一度しか日本に来る機会がなかったから、観光客みたいな気分だった。東京に住むようになってから、休暇でベルリンに戻ると、ドイツの色々なことに違和感を感じるようになったの。だから、だんだん日本人っぽくなってきているんだと思う」。こうして自分の中での変化を感じるようになったのは、日本人とドイツ人両方の価値観に触れる機会があったからだと彼女はいう。「東京に引っ越して間もない頃は、何事に対しても意見を言いたがるドイツ人的な自分が目立っていたの。私はアーティストのコミューンで育ったから、自然とリベラルな考え方に触れていたんだと思う。今まで耳にしなかった日本的な意見に触れたり、学校の制服もどこか制約的に感じて、学生時代のすべてを怒ったまま過ごすんじゃないかって思ったときもあった。でも、嫌だなって思う以上に、こういう考え方もあるんだって純粋に驚いたの。だんだん慣れてくると、自分もそういう考え方の存在にオープンになり、色々な考え方により寛大になれたの」。

幼い頃からアーティストの母親の被写体となってきた点子だが、東京でモデルという仕事に出会うことでモデルとしての自我が芽生え始めた。写真を撮られるのを意識し始めたのは、日本に来てプロのモデルとして仕事をするようになってからだという。「私自身は覚えていないけど、ママがいつものように私にカメラを向けると無意識にポーズをとるようになったらしいの。カメラを見ると、身体が自然と構えてしまう。ママ以外の人が私を撮影するようになって、自分が見られているという意識が生まれてきたんだと思う」。雑誌を後になって見返すと、自分の特徴がよくわかるのだという。「撮影のときに決まって言われることがあるの。『点子、アンニュイな感じ!』って。自分で言うのは恥ずかしいけど、目がぼんやりしてて、眠そうなのが私の特徴みたい」。ファッション雑誌の誌面にモデルとして頻繁に登場する点子だが、クラスメイトたちは彼女のことをどう思っているのだろうか? 「モデルだってことを学校で隠したりはしないよ。でも、自分から進んで話したりもしない。学校の友達はFacebookとか雑誌を見て私がモデルをやってることは知っているけど、普通に接してくれる。それに自分がみんなと違うとも思わない。私も普通の高校生だから」。

高校を卒業し今秋からNYの大学に進学する点子にとって、東京での生活は限られた時間を残すのみとなった。「東京での日常をとっても大切に思うの。通学に使ったバスとか、学校から渋谷の撮影場所への道のりとか、そこから家に帰るまでの道のりも。歩いても回れちゃうような距離だけど、自分の庭と思えるような場所ができたの」。そんな彼女に東京で一番好きな場所を聞くと、意外な答えが返ってきた。「東京で一番好きな場所はカラオケ。どこのカラオケってわけじゃなくて、あの雰囲気が好きなの。日本生まれの文化というのはもちろんだけど、カラオケの文化は日本人をよく表していると思うの。他の人の歌に耳を傾けるとか、順番を譲ったりとか、チームワークを大切にするところとか。まだ自分一人で行ったことはないけどね(笑)」。

インタビューの最後にNY行きの抱負を聞いた。「モデルの仕事は続けたいけど、それ以外にもやりたいことが山ほどあるの。文章を書いたり絵を描くのも楽しいし、最近は友達とコンピュータで音楽を作り始めたの。あとDJもね。まだやれてないけど、イベントや展覧会をオーガナイズしたり、色々なアーティストと一緒になって何かを作りたいと思ってる。アーティストに囲まれて育ったから、その環境を大切にしたいの」。点子の新しい挑戦への思いは尽きないようだ。「とりあえずはNYでちゃんと一人で生活できるといいな。新しい友達を見つけて、ゼロからまた新しい生活をスタートするの」。

ANORE.CO.JP/ARTIST/ACTRESS/TENKO
DOGSHIT-CEREMONY.TUMBLR.COM