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J-NERATION / YUTARO FURUTACHI
未来を創る才能たち。/古舘佑太郎 7/9
ISSUE 1
INTERVIEW TEXT JUNSUKE YAMASAKI
古舘佑太郎
MUSICIAN
類い稀な音楽愛
「失恋をして、結構それを引きずって、何とかしてカッコ良い姿を見せれば振り返ってくれるんじゃないか? それから詞を書くようになりましたね。今考えると恥ずかしいですけど、当時はそういう時期だったんでしょうね。書きたくて仕方がない。そんな感じでした。でも、その子には結局聴いてももらえてないと思いますけど」。古舘佑太郎が初めて音楽に気持ちを託した瞬間は高校一年生のときだった。「でも仕事になってくると難しい。いつまでも10代の頃の純粋さを持ってはいられないんじゃないですかね」。正直過ぎるくらいに語る彼の言葉に、メディア掲載用のコメントを用意している大スターたちとは異なる、透明感に溢れるピュアネスを僕は垣間見た気がした。
古舘は生粋の慶應ボーイだ。幼稚舎から大学まで名門校のエスカレータに乗っていた彼だが、「小学生のときから周りがやってないことをやりたい」という思いがあったといい、中学生のときからバンド活動を始める。今年3月25日に無期限の活動休止期間に入る同バンド、The SALOVERSのメンバーも学生時代から青春の数々を共有してきた仲間たちだ。「車はサ行から始まるものが多いらしくて、サ行から始まる名前にしようとだけ決めてたんです。ただ英語のカッコ良いバンド名を用意していたんですけど、(バンドメンバーの皆に)言うときにちょっと恥ずかしくなっちゃって……、適当にその場で考えたのが今のバンド名なんです。本当に意味はないんですよ」。しかし名門校の“内部生”である彼がバンド活動をすることは、同級生たちからポジティヴには受け取られてはいなかったようだ。「悪口を言われるんですよ。内部出身でバンドもやってて、目立つのかわかんないですけど。学校の2ちゃんねるがあって、そこでひたすら悪口を言われまくってましたね。学校では面と向かって言えないんでしょうね。共学と違って男子校は小さな社会のようなところがあるので、一番多感な時期に女子がいないっていうのは、エネルギーが違うところに向かうというか……。でも自分の好きなことをやれる環境が作れたので、そういう意味では高校は良かったですね」。
CDやMDで音楽を聴いてきた現在23歳の古舘には、音楽を生み出し、ビジネスをする者としての確固たる意思がある。「売る側からしたらこんなに辛い時代はないですよ。みんなCDを買わないですから。音楽自体が街の中にある公園みたいな存在になってしまっていて。公園で遊ぶときにお金を払うなんていう感覚はありませんよね。聴きたい曲がYouTubeになかったら、他に無料で聴けるいい曲を探そうってなりますし。お金を出してレコーディングして作っているものが、どんどんフリー化していってるので。僕自分もYouTubeとかを聴くことがあるので、別に怒りとかではないんですけど、ただただ辛いなと」。自らの音楽消費者としての経験も重ね合わせ、さらにこう続ける。「自分で買ったCDじゃないと聴かないんですよね。もらったCDってあんまり結局聴かないんです。それにただ鼓膜を揺らしたいだけなら、路上に行ってデッカイ音でやってたら、歩いてる人たちもみんな聞くので。でもその“聞く”はあんまり意味がないですし」。
「僕は『人生=音楽』みたいなタイプじゃないですね」と語る彼は、最近では演技活動にも意欲的に取り組む。「演技はまだまだ素人なので、楽しいことしかないですね。16歳の頃にバンドを始めたときと同じで、ノリでやっていますし、素人だからハードルも低いので褒められるし(笑)」。とはいえ、こんな彼の言葉からは音楽への特別な感情を汲み取らずにはいられない。「音楽は一曲が三分半くらいで聴けるし、データでも聴けるし、一番ライトで、人の感情を動かすものだと思いますね。やってる人間によって規模感はもちろん違いますけど、おそらく音楽は無人島にいたら成立しないような気がしますね。自分にとっての音楽は、自分が満足することが大前提のはずなのに、結局は人と人をつなぐアイテムのような気がするんです」。しかしThe SALOVERSは無期限の活動休止に入ってしまう。「一言じゃ言えないですけど、(メンバーたちとは)4歳とか5歳からずっと一緒にやってきているので、『ここらで一旦休憩すっか』みたいな感じです。ただ、この一段落するタイミングで、この4人が過ごしてきた時間を未練たらしく振り返るんじゃなく、それをひっくるめて今この時間を刻みたいと思っています。その時間を自分でも誇れるものにしたいんです」。
THESALOVERS.COM
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