J-NERATION / MAIKO TAKEDA

未来を創る才能たち。/武田麻衣子
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INTERVIEW TEXT JUNSUKE YAMASAKI
武田麻衣子
MILLINER / JEWELRY DESIGNER


世界を魅了する精巧な創造物

ビョークの動向をチェックしている人なら見たことがないわけがない。『BIOPHILIA』から『VULNICURA』へとプロジェクトをまたいで彼女が着用している数少ないデザイナーピースの一つが、武田麻衣子が制作するヘッドアクセサリーなのである。2014年、イギリスでの9年間の生活にピリオドを打ち、帰国後はISSEY MIYAKEに勤めている武田。繊細かつ大胆な彼女の作品はどのようにして生み出されるのであろうか?

高校卒業後の夏から渡英した武田。チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン、セントラル・セント・マーチンズ、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートと計三校で学んだ。「幼い頃から芸術系の進路に進みたいと考えていました。高校時代、日本の美大にいくための予備校に通っていたんですが、それがすごく楽しくて、そのときにデザインをやろうと思ったんです。東京で生まれ、同じ環境でずっと育ったので、自分が見たことのないところが絶対にあるはずだと思ってイギリスに行くことにしました。最初の頃は彫刻が合っているかと思っていたんですけど、もう少し制限があるもので立体的なものを作りたいと思い始めて、セントラル・セント・マーチンズのジュエリーデザイン科に行くことにしたんです」。そう語る彼女の根源的なモノ作りへ対するモチベーションには、どこかスピリチュアルでセンシティヴな理由がある。「小さい頃は『人が死ぬと天国に行って、天国で永遠に幸せに暮らして……』というふうに考えていたんです。でも、永遠というコンセプトに潜む『終われない』ということに怖くなってしまって、 親に聞いてみたんですけど頼りにならず……。そこから終わりがあるからこそいいんじゃないか、と思い始めて、生きている間に自分の分身みたいなものを残したいと思うようになりましたね」。彼女の作品が瞬く間に世界中に知れ渡ったのは冒頭にも触れたビョークが着用したことがきっかけだろう。「そもそも大学院で作った卒業制作をすぐに着けてくれるなんて到底思ってもいなかったですし、降って湧いた幸せな出来事でした。ビョークの作品に見られる人間性とか感情的なものは、自分自身もとても共感できる部分で、このような形でコラボレーションすることができ、光栄でした」。大きさによっても差異はあるが、同ヘッドピースの制作には約5日間を要するという。「私が一人で作るとちょうど顔が隠れるサイズのもので丸五日くらいあればできますね 。それまでにレーザーカットなどの下準備が全部揃っていればですけど。私は理屈っぽくない、ワクワクさせるようなもので、単純に見たことがなく、ゾクゾクさせるような色気のあるものを作れたらいいなと思っています 」。

彼女が作るピースの数々はファッションなのだろうか? アートなのだろうか? 不毛とわかっていながらそんなトピックを振ってみると、彼女はこのように語ってくれた。「私は学生として過ごした時間がすごく長かったこともあって、自分ができることと、それを元に社会の中でどういう立ち位置でいたいのかという答えを今も模索しているところです。ファッション寄りで商業的にものを生産して、より多くの人に身に付けてもらいたいのか? それとも一点ものの作品作りが向いているのか? どっちとは言い切れないんですけど、最終的に自分が作ったものを振り返ってみると、アートの要素を大きく含んでいるような気がします。ただ、アートかファッションかと問われれば、私はファッションという仕組みに惹かれる部分がたくさんあります。例えば、年に何回かコレクションを発表するそのサイクルはすごく早いですし、追い立てられ続ける時間軸だと思うんですけど、締め切りがある方が自分に向いていますね。そもそも単純に人が『これをほしい!』と思えるような、言い訳できない良さがファッションにはあるところが好きです」。

自らのブランドを立ち上げることもなく、現在、彼女はISSEY MIYAKEのアクセサリー部門に勤務している。「卒業後の進路については正直色々悩み、模索しました。しかし今、日本でお仕事をできるチャンスに恵まれたことは、自分が成長していく上でもきっと大切なご縁だと感じ、帰国を決めました」。9年間もイギリスで生活してきた彼女だが、決して自らが日本人であるということにこだわったり、それを主張したいとは思わないという。「日本人というアイデンティティを表に出すことがあんまり好きではなくて、ニュートラルな存在でいたいんです。でも、作っているものを見てみると、細かいユニットを繰り返して大きいヴィジュアルのエフェクトを作っているの で 、そういう感じに『日本人っぽい』というキーワードが入ってくることは仕方ないのかもしれません(笑)」。

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Maiko Takeda

ATMOSPHERIC REENTRY COLLECTION (2013-14)
PHOTOGRAPHY BRYAN HUYNH