CAMPER ROMAIN KREMER

広告されていく人物像の数々。
ISSUE 3
INTERVIEW TEXT JUNSUKE YAMASAKI
CAMPER ROMAIN KREMER 1

保険会社や銀行の広告であれば、著名なタレントの顔写真だけを用いたヴィジュアルを作ることも理解出来るし、商業目的ではない公共広告や意見広告の場合もまた、そこには宣伝したい“物”がある訳では無い。しかし、ファッションやコスメ関連の広告には、服やアクセサリー、香水等といった実際のプロダクト写真が映し出されていることは常識であり、そこに対してクエスチョンを投げ掛けるひねくれ者はあまりいない。CAMPERのクリエイティブ・ディレクター、ロマン・クレメールをひねくれ者扱いする訳ではないが、彼は現職に就任して以降、シューズブランドの広告キャンペーンにも関わらず、靴そのものを前面に打ち出すことのない広告を淡々と作り続けてきている。雑誌広告では靴自体が登場するヴィジュアルも多く存在するのだが、ヨーロッパの街中に貼られているCAMPERの広告ポスターには靴がほとんど登場しない。

「CAMPERの40年間に渡る豊富な広告ヴィジュアルのアーカイヴを振り返ってみて明確になったのは、アート、グラフィック、そしてファッションとは切り離して考えられないということでした。そしてブランドのDNAでもある型破りで、クリエイティヴ、そしてユーモアに溢れるという3つのポイントを人々に伝えることをゴールに設定したのです。また、個人的に目標にしていたのは『靴に人間性をもたらす』ということでした。『HOW  TO  WEAR  IT』の固定概念に捕われないように、靴を履いた人の人物像を想像していったのです。しかし、靴を作る会社であるという大前提があるので、服のようにルックやシルエットが無いというのは僕にとって新鮮な挑戦でもありました。その分、個々の異なるキャラクターが重要な鍵になりましたね」と広告キャンペーンのコンセプトについて語るロマン。更に彼はこう続ける。「制作の全ては一人一人が発揮するキャラクターやエネルギーを捉えることから始まりました。これによって靴という一つの物だけではなく、一人一人がコレクションを体現する重要な核の一部となっていきました。CAMPERのコレクションでは多くの靴を発表するので、一人のキャラクターが一つのラインを表現しているのです。そして一点一点の商品には対象となる消費者がいます。スマートなものが好みな人、はたまたスポーティなものや、遊び心のあるものが好きな人……。これらの発想がスタートポイントとなることが多いです。そこからは人物像を思い浮かべることと、靴のデザインを練る作業はほぼ同時進行です。色やテクスチャーに遊びを入れながらも、最初からアイディアは明確であることが多いですね。勿論、素晴らしい才能を持ったクリエイティヴチームと話し合っていると様々な化学反応があるので、当初のアイディアとは真逆の結果で終わることもあります。ただ、伝えようとしているメッセージの真髄は一切変わりません」。

こうしたロマンが生み出したキャンペーンヴィジュアル制作の方向性は、2015年春夏シーズンからスタートしている。「最初の2015年春夏シーズンはとてもグラフィカルなコレクションで、アプローチもとてもストレートなものでした。キャラクターをそれぞれの靴のアバターとして考案し、モデルのスタイリングというよりは、車や家具をデザインしているような気分でしたね。2015年秋冬シーズンは『木』『火』『氷』などの自然的構成要素がインスピレーション源になっていたので、風景写真を用いてキャラクターをより自然な環境の中に溶け込ませました。自然を3Dで解釈するという点では前シーズンのやり方に立ち返った部分もありましたが、CAMPERにとって全く新たな方法で探究することができたと思っています」。3シーズン目となる今シーズンは、CAMPERブランドにとってよりスペシャルなコンセプトが潜んでいる。「2016年春夏シーズンはCAMPERの生誕の地であり、本拠地でもあるスペイン・バレアレス諸島のマヨルカ島からインスパイアされています。中でも、島の特徴的な3地域に着目してキャンペーンは展開されていきます。プレシーズンのキャラクターポートレイトは山間にあるとても美しい村、デイアを体現しています。多くのアーティストが居住し、セカンドハウスを構えるような場所なので、古い絵画に見立てた3人のキャラクターを表現することにしました。2つ目がエストレンクという透き通るような美しい海のある地域で、キャラクターもこの未加工でピュアな海辺の自然を体現しています。3つ目の地域がアレルフで、これは実はアレナルとマガルフを組み合わせた名前です。ヨーロッパ中のティーンエイジャーが春休みになったら行く場所として有名で、クラブやバー、格安の宿で溢れています。キャラクター達は若さ、楽しさ、そして初めて友達と旅をするワクワク感や純粋な心を表しています」。

毎シーズン、撮影スタッフはロマンが信頼を寄せる精鋭達のみで構成され、彼らは皆、既成概念を覆すことを得意とするアーティスト達ばかりである。「このチーム構成はとても自然な流れで決まったと思っています。僕を含め、審美眼で共通点のあるメンバーだと思いますし、キャンペーンのコンセプトも全員を結び付けている重要な要因だといえます。全員を愛していますし、皆で一つの作品を作り上げていく作業は毎回刺激的です。制作プロセスはまず、膨大な量の画像やドキュメントをシェアする所からスタートします。そして撮影セットに集合した時には、既にスタッフ全員のやるべきことが明確になっている場合が多いですね。そこからはまるでアニメやスーパーヒーローを描いていくかのように、キャラクターを組み立てていきます」。

このようなラディカルなアプローチで“仕掛け”続けるロマン。彼に影響を与えた広告キャンペーン等は存在するのだろうか?  「一番のインスピレーションとなっているのは、ファッション業界で働いていた過去数年間の個人的な経験であることは間違いありません。そこに勿論、CAMPERという確立されたアイデンティティの持つレイヤーを足していくのです。忘れられないキャンペーンを挙げるなら、オリヴィエーロ・トスカーニによるUNITED COLORS OF BENETTONや、ニック・ナイトによるCHRISTIAN  DIORでしょうか。ただ、これらキャンペーンが直接的に私の制作に影響しているとは感じていません。そして、最近でいえばLOEWEのキャンペーンがとても好きですね」。そして今、自らが手掛ける広告ポスターを街中で見かけた時に彼はこのように感じるという。「とてもエキサイティングです! 僕らはコミュニケーションの領域を広げる挑戦をしていますし、受け取る人々もそれを楽しんでくれるといいなと思ってやっています」。

最後に彼はこう語ってくれた。「このキャンペーンの究極のゴールは、CAMPERというブランドと、若者やアーティスト、夢を追い掛ける人達を繋いでいくということです。消費者にコミュニケーションを図っていく際の核ともなっていますし、これは僕らの中で首尾一貫していることですね」。単に靴を売り捌いていくのではなく、スピリットに共感してもらうための、コミュニケーションツールとしてのCAMPERの広告キャンペーン。その斬新なシューズデザインだけでなく、今後も発信し続けるであろうそのヴィジュアル、そしてその裏側に存在するメッセージからも目が離せない。


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2015-16年秋冬シーズンのキャンペーンヴィジュアルより。


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2015年春夏シーズンのキャンペーンヴィジュアルより。


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