その前からリーマン・ショック、東日本大震災などで雑誌文化が衰退していき、雑誌の表紙、巻頭の編集ページですらタイアップの要素を盛り込んだものになっていくようになる。そうした中で、彼は一時、雑誌作りから、より作家を育てるという方向にシフトすることになる。「THE LAST GALLERY」という名前の小さなギャラリーは東京・白金の外れにあり、日本にある通常のギャラリーのやり方とは全く異なり、アーティストも抱えず、バッカーもなく、コレクターもいないところから始まった。アートやファッションが先の経済状況のためにマーケティングありきになっていく中で、グラフィティを中心にすることで、マーケティングとは反対のグラフィティに見られるケーヴアート的側面、プリミティヴアートとしてストリートから生まれたものが、本来のアートの世界に戻ることを予期していたからである(その間ももちろん写真のことは忘れておらず、本城直季や名越啓介の初の写真集を制作していた)。実際、現在のファッションの流れもSUPREMEを筆頭としたストリート寄りのものになっており、海外のアーティストやジェイソン・ディルともコラボレートしたブランド、HAVE A GOOD TIMEはこのギャラリーの二階から始まったのである。